5月1日
初めて訪れた神戸は北野の老舗、ビッグアップル。ホームページに目を通すだけで分かる我が道をゆく姿勢のお店、実際中に入ってみて感じるそれは嫌なものでは全然なくて「古き良き」が自然と残されてきたんだろうな、お客さんに愛されてきたんだろうな、と思わせる雰囲気がありました。おかげでとても落ち着いてじっくりライブを観れてよかった、お目当ては渋谷毅さんと二階堂和美さん。
その組み合わせでの演奏を何年か前に(たぶん服部緑地、「レインボーヒル」で)観たのが脳裏にしっかり焼きついていて、とくに渋谷毅さんのピアノをいつかじっくり聴きにゆこうと思っていたまま時はあれよと過ぎてしまい、ようやく機会を見つけて聴きに行けました。(二階堂和美さんとの共演が決まったのは今回行こうと決めてからで、しかもその共演自体が10年ぶりぐらいとのことで素晴らしい偶然!)
ライブは渋谷毅さんのソロピアノからスタート、の前に、会場にふらりと現れた渋谷さんはとても「ふつう」で何気なかった。何年か前に遠くから見たそのお姿はなんだか神々しく見えて、勝手に仙人のような人だと思っていたけど、近くでその存在を意識することになると、まるで気合いや気負いが感じられなく、ただそこにいる、そんな風で自然な存在感。
それから始まった演奏は深く静かに瞑想しているかのような、良い意味で跳ねない、一音一音思慮深く落としてゆくようなピアノの調べで、じわじわとまるで時を止めてしまうかのような夢心地のひとときでたまらなかった。おそらく40分程の演奏は短く感じられて、ああ、このまま醒めないで、と思わずにはいられませんでした。
休憩を挟んでニカさんこと二階堂和美さんと渋谷毅さんデュオ、久々に生で聴くニカさんの歌はやはり圧倒的で、曲毎に表情を変える歌声とそれに合わせて体を大いに動かす、全身で歌うその姿は観る人を惹きつける魅力に溢れていて、まさしくニカさん節。しみじみと聴かせられる「女はつらいよ」を歌いながら、前方のお客さん一人一人と握手を交わしてゆき和やかさと破綻を同居させる、そういうのが様になるのもこの人らしさ、だなあ、と。
私も握手を交わしてもらった中の一人で、その手の感触から感じたのは女性的な柔らかさではなく歌い手・演者としての力強さそのもので、それがとても印象的でした。
渋谷さんのピアノは寄り添う、というよりも、居座るという感じで、ニカさんの歌の溌剌さとの組み合わせが新鮮だった。いつか服部緑地で聴いた、渋谷さん作曲の「つるべおとし」を時を経てまた生で聴けて、とても感慨深かった。
柄にもなく渋谷さんからサインを頂戴して、帰路に着きました。ありがとうございました、ビッグアップル
渋谷毅さん+二階堂和美の10年ぶりのデュオ、ひとまず終了致しました!満員のお客様と共に今日この時間を共有できました事、本当に嬉しく思います。音楽の魅力ってこういう時間の中にいてこそ感じられるものだなぁと...。またどこかで2人の音楽を皆様と共有できる日がくる事を願って。ス pic.twitter.com/xdLPuU1RIi
— 二階堂和美 (@nikaido_info) 2017年5月1日
御年77歳の渋谷毅さんの佇まい、演奏を観て、余計に思うことは「ふつう」にいることの素敵さ・難しさ
ミュージシャンだから、格好つけないと、とか人を惹きつけ掴まないと、とかそういった「普通」の考えに締め付けられることなく「ふつう」に人前でただ培ってきたものでもって演奏をする、逆説的な特別さ
↓最近読んだこの話題の本に通ずるところがあるなと思いました。「普通」の考え、から逃れて「ふつう」に暮らすのが、いかに大変か
長々と後半はまどろっこしい文になった気もするけれど、5月はこんな風にはじまりました、ふつうに録音がんばります