のこりもの

おすそわけ

桃epにまつわる散文〜B面

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いよいよこれを書き終えたら、この夏も本格的に終わりを告げます、あくまでも自分の中での話ですが。

「桃ep」胸を張って、「どうぞ、これがバッチリ丘本浩一のやりたかったことです」とは言えないけれど、作って良かったとは思って今す。自分の作品としては久々の多重録音で、アレンジ面でこれまでして来なかったことができたし、これを作ったことで製作中のアルバムの方向性がより定まってきたので。

念のため書いておくと、「桃ep」はアルバムの予告編的なものではなくて、アルバムに至る階段・梯子みたいなものだとお考えいただけると有り難いです。それを今なんとか登ってゆけるような気がしています、秋に向けて

 

さて、ここからは「桃ep」後半、B面収録曲について。↓ダイジェスト1:06あたり〜

3曲目「渚に手」

2010年に発表、同じく無料配布していた「弾き語り録音集-初夏-」に収録した「渚にて」に手を加えてリメイクしました。テンポもキーも落として年をとった感じ、言葉さえもなくして、そんなバージョンです。ギターはマイクで録音せず、ライン録音のみを使用、苦労したところもあるけど、これはこれでアリの音になったと思っています。あと特筆しておきたいことは「桃ep」1〜3曲目まで同じキーです、テンポ感もずっとゆったりながら、なんとか飽きがこないよう意識してここまで作りました。

それでは、最後に4曲目「プール開き」

この曲だけ歌とギターに1本ずつマイクを立てて、弾き語りをそのまま収録しました。大村みさこさんとのデュオ「そもそもふるさとは」で作った曲で、「そもそも〜」では一度きりライブで披露したことがあるはずです。それ以降は自分のソロのライブでは夏に何度か歌っていて、夏がテーマの作品の最後に初夏を歌ったこの曲を持ってきて、出口になるように、また夏が繰り返すように、そんなイメージで収めました。歌がちょっと地味な仕上がりになってしまったのが心残り。

 

それでもこの夏の私の精一杯が詰まった「桃ep」

機会あれば、じっくり味わうように聴いてみてください。

 

ありがとうございました。さあ秋だ。

桃epにまつわる散文〜A面

9月に入ってから分かりやすく涼しくなり、こんなに夏と秋の境目がきっぱり現れるのって珍しい気がして、厳しい残暑感少ない今日この頃。

まさに夏の終わりに発表することになった「桃ep」についてもう少し書いておいて、あまりにあっさり行ってしまいそうな夏の背中を追ってみようかと思います。

以下、もう聴いていただいた方は補足的に、これから聴いてみたいという方は参考に、どちらにも当てはまらない方は暇つぶしにでも、よろしければお付き合いください。

 

完成したての頃はやはり作り終えた感が何よりも大きく、少し時を経て見えてきたことがあります。今回の「桃ep」はこれまでの作品とは違い、ギターと歌以外に色々な音を足してあって、それが曲そのものの骨格や魅力よりもムードや雰囲気を作り出している気がします。ある方からは「どこかアンビエント」というご感想もいただきました。いつ現れていつ消えるのかが曖昧な夏の蜃気楼のゆらめき、そんなムードを醸し出せていたらば、と思います。ここからは収録曲のことを。

まず1曲目「桃」、2分ちょっとの試聴サンプル作りました↓

去年の夏、10周年ライブを終えてからきちんと形にした最初の曲で、その準備やら何やらに追われて切羽詰まった時期の反動でしょうか、こんなゆったりとある意味ふつうの甘いことを歌った曲ができたのかな、と思います。ふつうがとくべつになれば、なんてことも込めたかったのかもしれません。自分が「桃を食べよう」なんて歌う日が来るとは思っておらず、不思議なものです。去年何度かライブで歌ったのとはちょこちょこ変えたところがあって、大きく違うのは今回の収録用に付け加えたイントロ部分、このイントロがまさに今回の作品の入り口で、「夏が来れば思い出す」そんなムードで始めてあります。それから、夏になると特に聴きたくなる、あるアメリカの偉大なバンドが1966年に出した名盤から一箇所サンプリングして使わせてもらっています。勝手ながらありがとうございます。

切れ目なく続く2曲目「取り憑かれて」

東京のバンド「ミツメ」のカバーで、4曲入りのシングル「めまい」に収録の1曲。ライブで何度か披露したことがあり、夏のけだるさに相応しいムードを持つこの曲を勝手に収めさせてもらいました。どうにもこうにもならん無常観を歌っていて、どこか腑に落ちるところがあり、違和感なく歌える曲です。意識的に揺れる音を多めに、部分的に自分としては大胆なアレンジを施せたことが今回の自然な挑戦です。1-2曲目ともにギターはマイク録音だけでなく、同録のライン録音を混ぜてあり、切れ目なく聞こえるように2曲続けて録りました。しつこいですが、切れ目なく続く、それを大事にした1-2曲目、A面です。

めまい

めまい

 

原曲はこちら


ミツメ - 取り憑かれて

 

それでは、この辺で。〜B面に続く

桃ep [2017.9.10更新]

桃ep -demo-

1. 桃 (→サンプル試聴)
2. 取り憑かれて
3. 渚に手
4. プール開き

-ダイジェスト試聴はこちら-

 『僕らはきっと夏の迷子』

ひとこと添えるならそんな感じ、夏にはどこか行きたいねえ、行ったねえ、楽しかったねえ、でも結局ここに戻ってきてしまうよなあ、みたいなムードの、夏にまつわる4曲を収録。私もこれを作っているときは、まんまと迷子さながらの状態になりました。

これまでと同じく自宅録音で最初から最後までひとりで作業に取り組みました。今作っているアルバムと同様に、今回はギターと歌以外に音を重ねに重ねてそこから削ぎ落として、この状態に落ち着きました。

去年の夏に作った「桃」を今回のためにアレンジしたのを軸に、夏によく歌いたくなる曲を並べました。どの曲も今回用の仕掛けを施してあります。ライブでは何度か歌ったことのあるミツメのカバー「取り憑かれて」はゆらゆらできるように、かつて夏には欠かさず歌っていた「渚にて」は「渚に手」になったり、「そもそもふるさとは」で一度だけ披露したことがる「プール開き」をひとりだけでおさめてみたり、今夏の感じで閉じ込めてみました。

ゆっくり腰を落ち着けて聴いてもらえるよう、テンポは遅めで、アナログEPを意識して1-2曲目がA面、3-4曲目がB面的に、それぞれのムードが持続することと、その中で入り口があって出口があるような仕上がりを意識しました。

補足的なセルフ解説はこちら↓

  

数量限定ではありますが、無料配布作品なので、会える方には直接お渡ししますし、郵送なども喜んでいたします。お気軽にご連絡お待ちしております。

※9月10日現在、手元にはわずかしか残っておりません。

現在、下記3店舗に置かせていただいております。数に限りがありますので、無くなっている可能性もあります、何卒ご了承ください。

(・8月31日、難波 絵本カフェ holo holo に置いていただきました。・9月2日、阿倍野 流流に置いていただきました。・9月7日、北浜 イオリ・雲州堂に置いていただきました。ご協力ありがとうございます!)

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勝手ながら、夏のうちに聴いてもらえたら、よりしっくりくるのではないかと思います。

よろしければ、しばしゆっくり、桃の甘みをじっくり味わうように耳を傾けてみてください。

8月28日

目覚めてまず身体の重たさを感じる、どっと疲れが顔を出している、やあ、おはよう、久々の感覚。今日は休もう

 

昨日で珍しく2つ続いた久々のライブが終わり、ギリギリまで取り組んでいた誰にも頼まれていない夏の自由研究の提出を何とか間に合わせられた気分、どこかやり切った感があります。

谷町九丁目ワンドロップ、阿倍野流流でのライブ、関わってくださったみなさま、ありがとうございました。 

こんな「提出物」を作りました↓

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まだもう少し続きそうな夏のおともにしていただけるとありがたい、来るべきフルアルバムに向けてのプレ・デモ・音源、的な位置付けの4曲入り無料配布CD-R作品「桃ep」

繰り返すうだる夏の感じを閉じ込めた、色んな音が聞こえてくる、まったりした音像のどこか夢見心地なやつです。タイトルは、アナログ盤のEPを意識してA面2曲・B面2曲、といった感じにしてみました。

いつもそうなってしまいますが、今夏の精一杯の絞り汁、配ってゆきます。希望としては夏のうちに聴いていただきたいところです。聴いてみたいという方には何らかの形でお渡ししますので、遠慮なさらずにお伝えください!(なお、近日中にダイジェスト音源公開予定、また改めて書きます。)

 

今朝はその音源の出来映えを確かめようと、比較対照として「図書館」のLPレコードの特典デモCD-Rを聴きました。

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ああ、生演奏の温もりが伝わる、特典デモとしては勿体無さ過ぎる一枚。

同じくデモ的な自分の音源は、ややくぐもったローファイぎみの音になってしまったけれど、これはこれでデモらしい出来映えです。

 

午後からは「この世界の片隅に」をGYAOで鑑賞、昂ぶりぎみの魂を鎮めようと思ったけれど、やっぱり作品力に引き込まれてしまう。ふつうの毎日の特別さよ、永遠に

あ、それから、フジロックのこと、長々と書き溜めてあって、何とか8月中には公開しようと思っています。ほぼ自分のための記録ですが。

 

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最後に、前後しますがライブのことを少し、昨日の流流で最後に観た大津光央と屋上ワルツ、久々にしっかりと聴いたその歌声には背筋が伸びる思いでした。閉じ込めるのではなく解き放つ、歌に宿る何かがその場の空気を支配する様は、どこかトリップ感もあり素晴らしかった。

私は2日間通して、とても私そのままの演奏ができた、と思うけれど、それ以上でもそれ以下でもない、気がしていて、またどうにかしないとな、と思います。

とりあえず、次は9月と11月に演奏の機会いただいてます、引き続き気を緩めずアルバム制作にも取り組みたいところ。

 

それでは、また

7月

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今月に入ってからレコードを買うようになりました。上の写真が今手元にある盤で、どれも本当により最高だと思えるようになって嬉しい。

長らくダメになっていた針を買い換えて、久々に針を落としたときの感動、、オーディオ環境・モニター環境を整えることをそれなりにはしてきたけど、すっきりした高解像度よりも私には今このふっくらした音がたまらなく愛おしくある。やめられない感覚。

そして、昨日、およそ1泊3日、はじめてのフジロック旅から帰ってきました。帰ってきてから腰を落ち着けて最初に聴いたのが旅の間に届いていたビーチ・ボーイズ「スマイリー・スマイル」の重量盤、まさに言わずもがな最高。

ひとりぼっちで土曜日のみ観に行ったフジロック、それなりに準備をしてみても雨には容赦なく降られたり体力は奪われたけど、ぼっちでも雨に打たれても遠く足を運んだ価値は大いにあった。

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2001年当時、何度も読み返したこの歌詞カードのブックレットの最後のページの右下辺りに書かれていることを、あれから時が経って体感できた。こんな日が訪れてとても良かった、と書くだけではまるで収まりきらない感覚を身体に覚えさせ糧にしてゆくつもり。

余談ながら私が観に行った前日には、上のブックレットにも記載がある通り2001年当時解散していたサニーデイ・サービスが時を経て、またフジロックのステージに立っていた、というのも感慨深いなあ

 

さて7月、あの日から1年が経ってしまったわけで、

それを意識せずにはいられない日々が続く中、よし、と思いついたことに多くの時間を費やしました。

来月は久々にライブが2つあって、まさにそのときにお披露目します。ネット上にはそれ以上書きません!「告知の告知」みたいなのをよく目にするようになった気がしますが、そういうのとは真逆のことをやってみよう、と。

蓋を開けてみないと分からないワクワク感を残しておきたい気持ちと、元来のひねくれ癖のせいです。

 

作業を進める合間、フジロックに行くちょうど1週間前あたり、ご無沙汰ながら近くにもライブ観に行きました。

土井玄臣さん・青木拓人さん・加納良英さんという(かつて自主企画イベントに出てもらったので)私のためといっても言いような共演と、3月33日のワンマンライブ。

比較は置いといて、似た人を挙げるのが難しい、替わりのないだろう音楽をそれぞれ続けてやっていてくれて、尊くもある嬉しさがあった。

土井さんが普通に考えるとどうしようもなく言わなくてもいいMCの後に「んんん」を熱演したところなんか、まさに「これが私なのよ」そのもののようで、きっとずっと忘れられないだろうな 


それでは、熱い夏、なるべくお元気で

フルーティ

6月もおしまい、今年も半分おしまい、、心を落ち着かせながらもここぞとばかりに燃やしてゆきたいところ。

ようやく「火花」見終わりました、ようやく「人生フルーツ」見に行けました。どちらも素晴らしくて、時間があって見られる人には勧めたい作品。

「火花」は民放の連ドラによく見られるような1話ごとの起承転結に乏しい分、小さなエピソードの連なりが生々しく大きなうねりとなって、後半に向けてドーンと花火が上がるかのようでいて、それとは逆に火花が散りゆくような儚さがとても心に残った。散った火花は煙になって消えてゆくけれど、その余韻はとても愛おしく残るもの。

同じく生々しい人と人とのやり取りの美しさを思い起こさせてくれた、近しい人のブログでのコメント欄のリンクも貼っておきます→ヒトリバンケット BLOG 続・コンビニ人間

www.hibana-netflix.jp

 

そして「人生フルーツ」、時を経てニュータウンの片隅で自給自足を営むようになった老夫婦のドキュメンタリー。と書いてしまうと勿体無い、それを大きく超える、事実は小説よりも奇なり、を地で行く、素晴らしく心揺さぶられる物語。「スローライフ」の先駆者とも評されるお二人の姿はDIYを貫いていてどこかパンキッシュにも映る、しかし穏やかさは絶やさない。「人にやさしく、まわりにやさしく」そんな言葉にすると簡単だけど、至極難しいことをやってのけてきた軌跡の奇跡をじっくり目に焼き付けました。暮らしそのものの豊かさを大切に見つめる視点と戦争の影響を語ることが不可避なところは「この世界の片隅で」とも通じていて、今語り継がれるべきものだなと思った。 f:id:okawokudareba:20170630230732j:image

買って帰ったパンフレットを読み返すだけでまた涙誘う、良い意味で困った作品。大阪では8月頭までは上映されるようです。

映画『人生フルーツ』公式サイト

 

なんというか、入力過多で出力に困っているようなきらいがありますが、触れられた作品の美しさに敬意を払いつつ、語り継がれてゆくことの尊さを思い、日々を、時を、ためてゆきたい。いざ夏本番

愛の休日

5月もまたおしまい、今月ほぼ毎日聴いてた曲はコレ↓


柴田聡子「後悔」(Official Video )

ああ、きた、あの曲がきた

ねえ、いま、君も気づいた?

歌い出しから何かが始まりそうなワクワク感、もし別のタイトルをつけられるなら「本気」でしょう、そんな気合いがビシバシ伝わってくる1曲。ドラムとベースとコーラス含む歌声だけで曲はおおよそ成り立っていて、それはモータウン的とも言えそうで(2:42という曲の短さも!)、もともとのアコギ弾き語りのイメージから大きく羽ばたいた感のある強靭なポップス。歌詞には突拍子さも挟みながら、準備する・祈る・抱きしめる・本気、といった普遍的な言葉・テーマがここぞとばかりに散りばめられていて、オザケン「強い気持ち・強い愛」あたりを思い出したり。もしこの曲を他の曲の間に並べるなら、大貫妙子「くすりをたくさん」荒井由美「中央フリーウェイ」の間に入れたい、そんな曲が2017年にしかもこの人から聴けるとは思いもよらず、なんとも心躍りました。

そんな1曲も入ったアルバム「愛の休日」のことを書いておこうと思います。

愛の休日

愛の休日

 

一聴するとフォーキーな感触がありつつ、聴き進めるほどに不思議とはぐらかされる、散らかりながら広がる柴田聡子ワールド。どこか偉そうになってしまうけど、きっと彼女は跳躍したかったんだ、と思う。その跳躍は離陸と着地点がまるで違っていて、そんな跳び方する人いないよなあ、という面白さ。

柴田さんのことを書く上で歌詞のことは避けて通れないところで、改めて思うのは、説明的な描写は控えめに、あえて親切さとは程遠いあくまでも自分の視点をそのままぶち撒けるかのような描写の多さ。デコボコでいびつな言葉の連なりは一見ふざけているようにも聞こえて、たとえ本人はまじめなつもりでも、そのユーモラスさがシンガーソングライター的な生真面目さを回避し、独特な開放感を醸し出している気がします。

完成度や統一感のある名盤、とはまた違う、この人にしか到達できない音楽で、やっぱりこの先も気になる人です。

 

自分の近況といえば、引き続き録音という名の沼にいます、文字通りの沼感あって抜け出せるのはまだまだ先になりそう。

不思議なタイミングで連絡くれたり会えた友だちにはありがとうを言いたい、どこか祈りに近いようなイメージでRECボタンを押せるようにしてゆきたい